【導入事例 Vol.2】
九州大学 准教授 吉永幸靖 様

interview_02_01

■先生の取り組まれている研究は、どのような内容でしょうか?

interview_02_02

専門は画像を対象とした情報処理。現在は「線集中度」という概念を用いて、淡くて見えにくい画像を認識する技術の開発に取り組んでいます。 線集中度とは、明るさが変化する方向に注目して「線」を認識する考え方です。2次元微分ベクトルの向きの分布に着目すると、線をなす領域ではベクトルの向きは中心に対して対向する分布を持ちます。このような向きの分布を「線集中」と呼び、そのベクトルが線集中する領域の線らしさを「線集中度」として数値化できるのです。この概念に基づけば、淡くて見過ごしてしまいそうな線も認識でき、X線像や眼底写真といった医用の画像診断にも応用の可能性が広がります。2010年には「線集中度の高速計算法」で特許も取得しました。

■計算の特徴を教えてください。

interview_02_03

我々の使っている計算は、1つずつの計算は軽いのですが、同じ計算を何度も繰り返すのが特徴です。例えば、一つの画像を解析する時、横4000 pixel×縦3000 pixel(1200万画素)の画像を解析する時。1pixelあたりの光を比較して計算するため、同じ計算を1200万回することになります。1枚の画像に8GBのメモリを必要とすることもあるので、スワップアウトを起こさないよう、安全のためにメモリは256GBほど積んでいます。

■一度にどのくらいの計算を行い、どのくらい時間がかかっていますか?

interview_02_04

アプライドさんからXeonのワークステーションを購入してから、実験のスピードが格段に速くなりました。CPUの数が少ない前の世代のマシンの時には、1枚の写真の解析に40分ほどもかかっていました。それが今は1分少々。かつては「画像診断に40分もかかっていたら使い物にならない」とお医者さんに言われたこともありますが、これくらい時間短縮できたら臨床で使える可能性も広がりそうです。

■シミュレーションを行う際に、最も重視しているハードウェア・スペックは何でしょうか?

interview_02_05

高速化するためのメモリとCPUですね。一つの共有メモリのうえにたくさんの演算機が乗った状態が必要になります。計算自体がメインなので、表示装置もそれほど高性能なものは必要がないですし、HDDも大きい必要はありません。設備投資は研究のスピードに直結するので3~4年で入替えしています。

■今後の科学技術計算分野に必要なものは何でしょうか?

interview_02_06

十分に並列計算の性能を発揮させるには、まだまだプログラムに手間がかかっているのが現状です。我々の専門は画像処理なのですが、その話をするために並列計算や計算機科学の話を熟知しておく必要があります。その難易度が高いので、学生が使えるようになるまでに訓練に時間がかかっているのです。Xeon Phiは特に難しい。本来の並列計算という業務に集中できるように、もう少し使いやすくなるといいなと思います。

■今後の展望をお聞かせください。

interview_02_07

これまで医工連携をテーマに、計算機による診断支援システムの構築に取り組んできましたが、企業との共同研究で臨床段階に進んでいるものもあります。また、九州大学の連携包括協定により、自動車関連企業との自動運転装置に関する共同研究も始まっています。夜間や悪天候など、視界が悪い状態での人の認識や危険回避に、我々の技術が応用しようというものです。研究に携わる学生の修士論文では、検出率を5%から80%近くにまで向上させられたというデータも公表しています。計算機の高速化が進み、研究の速度と精度が上がれば、もっといろいろな分野にも応用が広がっていくでしょう。

■弊社の製品の感想をお聞かせください。

interview_02_08

我々の求めるワークステーションは、サーバ目的ではないため、24時間稼働させるための安定性や電源の信頼性、HDDの信頼性といったものは必要ないのです。ですからCPUとメモリに特化して入れてほしいと依頼しました。メイン画像システム装置は高速化実験のためにMICボードにXeon Phiを入れたものを。サブ画像システム装置は、従来からの実験に対応するために、Xeonの比較的高クロックでコア数が非常に多いものを入れたいとリクエストしてつくってもらいました。一般的ではない、かなり偏ったスペックかもしれませんが、我々の研究に対応した構成を、リーズナブルにカスタマイズできるので満足しています。

■弊社のサポート等の対応はいかがでしょうか?

実験規模が上がり、予算が確保できた時などにスペックアップの相談がしやすいので助かっています。現状の構成を分かった上で「これを入れたいんだけど」という会話が通じるので話が早い。売りっぱなしではなく、担当の営業さんもちょくちょく顔を出して新しい情報を提供してくれるので、いつも頼りにしています。

■導入ワークステーション

モデル名 / 型式 CERVO Phi Type-XX7120P
外形寸法 約(W)178×(D)673×(H)462 mm  突起部は除く
初期 OS Windows Server 2012 R2 Standard 日本語 (2CPU/仮想:2ライセンス)
電源 1620W(200V環境時) 冗長化電源 80PLUS Platinum Level
チップセット Intel® C602 chipset  最大512 GB DDR3 ECC Registered memory
プロセッサー [2基] インテル® Xeon E5 2690 V3
(プロセッサーあたり:2.3GHz/3.6GHz/25MB キャッシュ/10 コア/20 スレッド)
プロセッサー・ファン 4U Active CPU Heat Sink for X10 Socket R WS
メモリー DDR3 1600(Reg-ECC) 256GB (16GB×16)
メモリー・スロット 16 スロット (空き:0 スロット) 最大 512GB
ストレージ 2TB 高耐久 HDD (7200rpm/64MB/SATA3)
対応 RAID RAID 0/1/5/10
光学ドライブ DVD スーパーマルチ
グラフィック NVIDIA® Quadro® K620 DDR3-2GB
(Display Port:1 ポート/DVI-I:1 ポート)
計算加速器 Xeon® Phi® 7120P (61 コア/244 スレッド/16GB)
サウンド 非搭載
ネットワーク 2x Intel® i350 Dual Port Gigabit Ethernet :2 ポート
USB USB2.0:6 ポート (全面:2 ポート/背面:4 ポート)
その他 Serial Port:1 ポート
拡張スロット PCI-Express 3.0 (x16):4 スロット (空き:2 スロット)
PCI-Express 3.0 (x8):2 スロット (空き:2 スロット)
PCI-Express 2.0 (x4):1 スロット (空き:1 スロット)
ドライブ・ベイ 5 インチ:2 ベイ (空き:1 ベイ)
3.5 インチ:1 ベイ (空き:1 ベイ)
3.5 インチ・シャドウ:8 ベイ (空き:7 ベイ) HotSwap対応
入力機器 スタンダード・キーボード + オプティカル・マウス ※USB 接続
保証期間 3 年間センドバック方式ハードウェア保証

本製品 CERVO Phi Type-XX7120P シリーズは、こちらをご覧ください。