【導入事例 Vol.14】
横浜国立大学 准教授 島 圭介 様

■経歴

広島大学大学院工学研究科で複雑システム工学を専攻し、博士号を取得。2013年より現職。「ヒトメカニズムx知能ロボットで人を支援する」をスローガンに研究活動を行なっている。

■先生が取り組まれている研究はどんな内容でしょうか?

人間はいろいろな動作を何気なく行なっています。例えば、物を取るために手を伸ばす動き。ごく自然にやっている動作ですが、多数の筋をバランスよく収縮させたり、現在の状況や過去の経験からの判断など、多種多様な情報を処理することで成り立っています。しかし、こうした情報処理の原理は明らかになっていません。私の研究室では、これらのヒトのメカニズムを解明し、AI(人工知能)を搭載したロボット工学技術と組み合わせ、さまざまなシーンで人間を効果的に支援する技術の開発に取り組んでいます。

■具体的にはどんな研究でしょうか?

私は、ヒトの身体から発生する筋電位や脳波、筋音図といった生体電気信号に着目しています。生体電気信号は、ヒトの意思や身体の内部状態を反映しているからです。そうしたことをベースに、私の研究テーマは大きく3つの軸があります。1つめは、生体電気信号を高精度にかつ高速に読み取り、どんな動きなのか推測できる人工知能の開発です。2つめは、ヒトの運動メカニズムの解明を目指した生体電気信号の測定と解析。生体電気信号からの情報を計測して特徴を抽出し、ヒトの意図を読み取って評価します。さらに感覚や神経機能、筋骨格系の働きを表現するヒューマンモデルの構築に取り組んでいます。3つめは開発した人工知能、ヒューマンモデルを用いて人間を支援する技術をつくること。主には医療・福祉分野の技術で、医学研究者や理学療法士と共同で進めています。

■代表的な研究事例を教えてください。

2つの事例を紹介します。1つめは、ヒトからヒトへ関節動作を伝達する技術の研究開発です。被験者の動作に伴って発生する筋電位や脳波などをセンサーで読み取り、それがどんな動きなのか人工知能が推測し、電気刺激のパターンに変換します。この変換された電気刺激を、別のヒトの筋に直接送ることができる技術です。関節運動情報を相手に伝達できるので、事故や病気などで身体が動かなくなった方のリハビリに利用できます。また、スポーツの技能習得やアスリートのパフォーマンス向上、伝統工芸の技術継承など、幅広く応用可能です。

ここまでお話してきた研究は実用化に向けて検証中ですが、最も実用化に近づいているのが、2つめの事例として紹介する転倒予防・歩行支援システムです。これは、目を閉じて片足立ちのような不安定な姿勢でも、カーテンなどに軽く触れているだけで姿勢を維持しやすくなったり、歩行しやすくなるという人間の機能に着目した技術です。ユーザーの片手の指先にセンサーを取り付けて、手の振り具合に合わせて振動による刺激を与えることで、何かに軽く触れているように感じさせる仕組みです。この「何か」を私たち研究グループは「仮想壁」と呼んでいます。仮想壁のシステムを用いた機器も開発しており、それを利用すれば空間で仮想壁に触れながら歩くので安定した歩行ができ、足腰が弱くなった高齢者の転倒予防が期待できます。高齢者の場合、転倒して骨折し、寝たきりになるケースが少なくないので、転倒のリスクを減らすことは大きな意味をもつのです。このほか、建築工事現場で働く方の転倒防止など、産業分野でも利用できるでしょう。

■弊社のワークステーションをどのように活用されていますか?

研究のプロセスでは実験や学習計算を繰り返し行い、試行錯誤の積み重ねです。そんななか、私の研究室で高性能のマシンとして常に稼動しているのが、アプライドさんのワークステーションです。購入の際、重視した機能はCPUとGPU、計算のスピードです。アプライドさんの製品導入後は膨大なデータの処理をより高い精度で高速で行なえるようになり、研究の効率と成果に結びついていると感じています。以前は1週間かかっていた計算が、今は1日でできるようになり、いろいろな実験を試す余裕と時間が生まれました。

■弊社の製品の感想はいかがでしょう。

品質、営業担当者さんのフォロー、ともにしっかりしているという印象です。私は学生時代、パソコンショップでインターンとしてマシンのメンテナンスを担当していたことがあり、パソコンの内部についての知識をもっているのですが、アプライドさんの製品は信頼できると思っています。

■今後の展望をお聞かせください。

社会の役に立つものをつくりたいという思いで、日々、研究に取り組んでいます。アイデアはたくさんあるので、形にしたいです。そのためにも高性能のマシンを使い、世界を変えるような研究開発にチャレンジしていきたいですね。